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ep-VALIQs-OverAll-002 “倫理・制度説明”

VAL-IQs倫理・制度説明

目次

Summary

イサナ・クドウは、VAL-IQsを「正しい結論の装置」だとは言わない。
それは、結論に至るまでの手続を壊さないための装置だ。

目的限定。
匿名層。
選択的開示。
異議と救済。
監査と白書。
非常時は数値トリガで発動し、自動失効と事後白書で縛る。

制度は優しさの演出で人を回収しがちだ。
だからイサナは、義務を選択へ移す。
逃げ道が残るように、境界を直す。


EPISODE

INTRODUCTION

倫理レビュー室の光は強くない。
机の上には、ひとつのケースログだけが開かれている。
イサナは読み上げない。
先に、息をつく。

「問いは二つです」。
「制度は、何を根拠にしたか。
そして、その人にどんな逃げ道を残したか」。


01 | VAL-IQsは「手続の装置」である

VAL-IQsは、評価中枢だ。
でもイサナは、評価の話から始めない。

制度は、入力を受け取る。
Sylphが調律し、CORAが構文を整え、PoSntが感性の温度を渡し、SCOが応答形式を選ぶ。
そこまでが、制度が持つ力だ。

そして、なぜここまで手続が要るのか。
理由は「人を縛るため」ではない。
[[TASR‑10]]が示すように、不確実性は消えず、誤判定は不可逆で、厳密化は脆弱化する。
だから制度は、正しさの演出ではなく、壊れ方を管理するために手続を持つ。

「ここから先は、制度の外側が支えます」。
IEB。
UISE。
監査。
白書。
そして人間承認。

AIはクオリアを見ない。
過適合もする。
だから、重要決定は自動化しない。
判断が強いほど、手続が必要になる。


02 | 目的限定と、匿名層と、選択的開示

イサナは、まず目的を固定する。
「何のために集めた情報か」。
ここが曖昧になると、制度は万能に見えてしまう。
万能に見えるものは、だいたい窒息を生む。

だから、匿名層が既定になる。
公開は二層化される。
一般向けの要約。
監査向けの詳細。

個人に返すのも、全部ではない。
選択的開示が基本だ。
本人が見たい範囲。
本人が隠したい範囲。
その境界が、手続に埋め込まれる。


03 | 異議は「押し返すための回路」である

SCOの出力は、結論ではない。
可否。
条件。
理由文。
公開範囲。
異議トークン。

イサナは、異議を「文句」とは呼ばない。
制度が自分を修正するための入力だ。

簡易異議は即時に返す。
正式異議は期限を持つ。
起案。
審査。
判定。
救済。
各段階で、理由文と公開範囲が更新される。

救済には選択肢がある。
記録の訂正。
不可視化。
再評価。
補償。
公開範囲の縮小。

「選択肢があることが救済です」。
イサナは言う。
制度が一つの正解で押し潰さないために。


04 | 非常時は、時限化される

非常時のいちばん危険なところは、長引くことだ。
緊急が日常になった瞬間、制度は別物になる。

だから非常時は、数値トリガと第三者承認で発動する。
そして自動失効する。
復帰手順と縮退手順が前置される。
事後白書が義務になる。

「非常時は便利だからこそ、縛る」。
イサナは短く言う。
縛りがない非常時は、ただの権力になる。


05 | 余白構造:ASTRA/SHIROは制度の逃げ道

制度が扱えないものを、削除しない。
でも評価にも回収しない。
そのために、ASTRAとSHIROがある。

詩。
祈り。
沈黙。
非構文の共鳴。

「余白が監視対象化したら、制度は死ぬ」。
イサナはそう言って、保存時限と閲覧ログの設定を確認する。
逃げ道は、追跡されすぎると逃げ道ではなくなる。


ENDING NOTE

イサナは最後に、ケースログの一行だけを修正する。
義務だった導線を、任意の導線に戻す。
ほんの少し、境界をずらす。

「制度は、正しさを増やすときに壊れます」。
「だから私は、逃げ道を残します」。


CORE (Explanation)

VAL-IQsの倫理と制度は、結論の正しさよりも、手続の耐久性を重視して設計されている。
AIの限界として、クオリア不可視と過適合が前提に置かれ、重要決定は人間承認と異議・救済を伴う。
制度の出力はスコアだけではなく、可否・条件・理由文・公開範囲・異議導線を含む形で「責任閉包」を目指す。

正準モデルでは、SCOが決定Dを出し、VAL-COREが応答R(保留/傾聴/白応答/公開/救済)を選択・実行する。
このRの閾値と公開粒度は、[[世界設定ベクトルω]](世界観レベルの均衡点)を、[[LVI]]として制度OSへ射影したものとして運用される([[Structure_VAL-IQS_v251229]]準拠)。

データ原則は目的限定、最小化、匿名層、選択的開示を核にする。
公開は一般向け要約と監査向け詳細の二層化で、機微は匿名要約に限定する。
監査は照会ごとに証跡を返し、第三者検証に耐える形式を採用する。
運用変更は段階適用と記録を前提とし、失敗は白書で公開する。

非常時は数値トリガと第三者承認で発動し、自動失効と事後白書が義務になる。
緊急変更の常態化を防ぎ、復帰手順と補償原則を先に定義する。
また、評価不能領域はASTRA/SHIROへ分離保存し、制度判断の根拠に用いない。
余白は制度の外部ではなく、制度内に設計された「制度内の制度外」として、表現の自由と呼吸を担保する。


ADVANCE (Thinking)

制度は、善意で窒息を生むことがある。
正しさを増やすほど、人は逃げ道を失う。
そして逃げ道が消えると、異議は怒りに変わる。

イサナの倫理観は、断罪ではなく設計へ落とすことだ。
「義務の場所を、選択の場所に移す」。
その小さな移動が、呼吸を戻す。

あなたの周りにも、善意のルールがあるはずだ。
そのルールは、異議の回路を持っているだろうか。
非常時の便利さに、ちゃんと終わりが設定されているだろうか。
そして何より、説明した瞬間に壊れる感触を、沈黙のまま残せる場所があるだろうか。


ROLE / 登場人物

  • イサナ・クドウ:VAL倫理官。現場の違和感を断罪せず、境界の設計へ変換する。義務を選択へ移す。
  • IEB-倫理執行局:重大案件の上位承認と封鎖領域の監督。事後白書の責任を持つ。
  • UISE-倫理制度統括院:倫理制度の統括。白書監督と制度運用の整合を担う。
  • SCO:制度判断。可否・条件・理由文・公開範囲・異議トークンを生成し、責任配分を選ぶ。
  • CORA / PoSnt:評価前処理と感性補正。誤読と過検出を減らすが、万能ではない。
  • ASTRA / SHIRO:評価不能領域の分離保存。制度判断の根拠に使わないための余白。
  • MINT:制度時間監査サブコア。緊急の常態化やドリフトの型を提示する。

TERM / 用語設定

原則

  • 目的限定:用途を明示し、用途変更は段階適用と記録を前提にする。
  • 匿名層:再識別リスクを下げる既定の保護層。公開は匿名要約を基本とする。
  • 選択的開示:本人が見せる/見せない範囲を選べる設計。公開範囲はログとして残る。
  • 比例原則:誤読・過検出がゼロにならない前提で、介入の強さを抑制し、救済で備える。

手続

  • 異議(Appeal):簡易/正式の二段で受付し、期日と理由文更新を伴う押し返し回路。
  • 救済(Remedy):訂正、不可視化、再評価、補償、公開範囲縮小などの選択肢。
  • 白書(White Paper):制度変更や非常時運用の事後説明。失敗も含めて公開する責任文書。

非常時

  • 数値トリガ:発動条件を数値で固定し、恣意的な拡大を防ぐ。
  • 自動失効:非常時モードの期限。便利さが常態化するのを防ぐ。

VAL SYSTEM TAGS

VAL:
principle: “Purpose Limitation / Minimization / Selective Disclosure(目的限定・最小化・選択的開示)”
appeal: “Two-stage Appeal + Remedy Options(二段異議と救済選択肢)”
emergency: “Numeric Trigger + Third-party Approval + Auto Expire(数値トリガ・第三者承認・自動失効)”
oversight: “Audit Trail + White Paper(監査証跡と白書)”
margin: “ASTRA/SHIRO Non-evaluative Buffer(余白の分離保存)”

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